こんにちは、金継ぎ講師のジャンです!
東京タワー近く、港区三田の
うづまこ陶芸2階「うづまこ金継ぎ教室」で、
天然の漆を使った伝統的な金継ぎを教えています。
先日の金継ぎ教室で
海外からお越しのお客様から、
こんな質問をいただきました。
「Is this Gum?(これって、ガムですか?)」

あるいは日本語で「ゴム(Gomu)?」
と仰ったのかもしれません。
通訳をしてくれていたボランティアさんが、
すぐに答えてくれました。
「No,it’s not. Urushi is Japanese lacquer.」
(違いますよ、漆は日本の塗料です)
もちろん、通訳さんの答えは正解です。
漆は、輪ゴムやタイヤなどの原料の
ゴムとは違いますからね。
植物学的にも別ですし、用途も違います。
ただ、私はそのやり取りを聞きながら、
「ん?いまゴムって言った?」
私は超日本語専門家wwwなので(笑)
自分の全く心許ない
理解にもとづいて
心の中でひそかに驚いていました。
(ガム……実はその表現、
科学的にはめちゃくちゃ鋭いぞ!)
と。
というわけで今日は、
「漆(うるし)」という不思議な樹液の
正体についてお話しします!
「ゴム」と言いたくなる気持ち、、、
わかるんです。
なぜ、お客様は「Gum(ガム)」「ゴム」だと
思ったのでしょうか?
そもそも、「漆」は「うるしの木の樹液」です。
天然ゴムも、ゴムの木からとれる樹液からできています。
そして実は、
漆の採取する「漆掻き」(うるしかき)は、
ゴムの木から樹液を採る姿とそっくりです。
なので、漆掻きの画像を見て
「あれ?ゴムなの??」
と思われるのも納得なんです。
どちらも木が傷ついた時に
自分を守るために「樹液」が滲み出てきます。
自然な状況下では、その樹液が固まって
かさぶたの様になり木は身を守ります。
私たちは、ゴムも漆も
その命を守る樹液が固まる前に
いただいているわけなのです!
科学的に見ると「Gum」は大正解!?

そしてここからが、漆(金継ぎ)専門家として
お伝えしたいマニアックな話なのですが、
実は、漆の成分を分析すると、
「Gum」が含まれているのは事実なんです!
少し専門的になりますが、
漆は主に3つの成分でできています。
1.ウルシオール(固まる主成分)
2.水
3.ゴム質と酵素
この「ゴム質」は、
漆の中で水とウルシオールを仲良く混ぜ合わせる、
いわば「つなぎ」の役割をしています。
含有量は数%から十数%ほどですが、
確かに「ゴムの親戚」のような成分が
漆の中には存在しているのです。
つまり、
お客様が言った「Is this Gum?」という質問は、
成分的には「Yes!(の一部が含まれています)」
も正解なのです!
核心を突いた質問に、
私は内心ドキッとしていました(笑)。
成分に「ゴム質」を含んでいる漆。
では、固まるとゴムのように弾力が出るのでしょうか?
ここは面白いところで、
産地によって性格が違います。
日本や中国の漆に比べて、
ミャンマーやタイなど東南アジア産の漆は、
この「ゴム質」の割合が高い傾向にあります。
固まった後も多少弾力のある仕上がりになります。
現地ではその柔軟性を活かして、
竹細工のコーティングなどに使われています。
もしかすると、お客様はアジアの他の国で、
そういった「ゴムっぽい質感の漆」に
出会ったことがあったのかもしれませんね。
「じゃあ、やっぱり漆はゴムなんですか?」
と聞かれたら、
私の答えは「NO」になります。
成分は似ていても、
「固まり方」と「仕上がり」が
決定的に違うからです。
ゴム:乾燥して水分が飛ぶと固まります(物理変化)。
漆:空気中の水分を取り込み、酵素の力で化学反応を起こして固まります。
特に日本産の漆はゴム質が少なく、
主成分の「ウルシオール」が非常に豊富です。
そのため、化学反応で固まった後は、
硬く、磨けば深みのある美しい艶が生まれます。
「Is this Gum?」
お客様の何気ない一言が、
漆の成分や、
日本独自の「硬く固まる漆」の特異さを
改めて思い起こさせてくれました。
教室では、そんな不思議で奥深い
漆という樹液を使って、
世界に一つだけの器を直す体験をお届けしています。
日本の伝統的な魅力を、ぜひ体感しに来てください。
うづまこ金継ぎ教室
